

「いらっしゃいませ」
カウンターに立つ店主が私にほほ笑みかけました。
ぱりっとしたホワイトシャツに黒い蝶ネクタイの上品な老紳士です。
「あの、先週の日曜インターネットで…」
口ごもる私に軽くうなずいた店主は、
「拝見しております。以前はすべて店頭でうかがっておりましたが、近頃はすこぶる便利になったものですね」
「美品 佳品 なんだかよいもの 星ノ砂商店」。
インターネットサイトで私は、奇蹟のようにこの店を見つけました。そこには年令や職業など一般的な質問の他
「差し支えなければお答え下さい」と前置きされた不思議な設問もいくつかあって、
私は小さい頃の夢や、繰り返し読む本や、思い出に残る恋愛など、問われるままに書き込んでいたのです。
最後に「心からきれいになりたいと思いますか」という問いの答え「YES」にチェックして、メール送信は完了しました。
あとには店の地図が、お客様のご来店を心よりお待ちしておりますという言葉を添えて現れただけ。
そんな頼りないものを頼りに、とうとうここまで来てしまったのです。
「ネットショッピングは、やってないんですか」
「そういった先進のサービスもいずれは。なにぶん、いまはまだ私の手に負えません」
ですが、と控えめな自信を漂わせながら、
「お客様にぴったりの商品をご用意しておりますよ」
私の話や注文を聞くでもなく、店主は背後の商品棚から透明な海の色をした小瓶を選び取り、
黒光りのするカウンターに置きました。よく見ると中にはこれも透明な玉のようなものが十粒ほど詰まっています。
「これはスズメの涙と申します」
店主の説明によると、スズメというのは昔この島にいた少女の名で、これは彼女がある青年に想いをよせていた
ごく短い間に、こぼされた涙のエッセンスであるということでした。
「これを飲むと、どうなるんですか」
期待よりむしろ不安を込めて効能を訊く私に、
店主は落ち着いた口調で答えました。
「一粒でちょうど一日だけ、純粋を取り戻します。ただし一度に一粒、それ以上は飲んでも効き目は変わりません」
「どうして、それが私に」
「それはもちろん」
店主は満月のように穏やかな笑みを浮かべました。
「最後の質問にYESと答えられたからです」
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